峠三吉『原爆詩集』最終稿


内容:峠三吉(1917〜1953)が孔版による『原爆詩集』出版直前に朱筆で推敲した最終稿で、「あとがき」には1951年5月10日の日付が記されている。

所有者:広島市 市長 松井一實

管理者:広島市

寸法など

大きさ 縦25.5㎝×横36㎝

藁半紙・41枚

万年筆による記載


 峠三吉(1917〜1953年)が孔版による『原爆詩集』出版直前に朱筆で推敲した最終稿。

 峠家の長兄・峠一夫が保管(一夫の死去後はその長男・峠鷹志氏が保管)していたもので、2015年に峠鷹志氏からの寄贈を受け、現在は広島平和記念資料館で収蔵している。

 

 第二次世界大戦の5年後に起きた朝鮮戦争の中で、トルーマン大統領(当時)が再び核兵器を使用することをほのめかしたことを受け、峠が急いでまとめたものが『原爆詩集』だ。GHQによるプレスコードにより、「原爆」という言葉やそれに関する記事や発言に規制がかけられている中で、病床で推敲を重ねられた。「原爆詩集」の中でもとりわけ有名なものが『序』であり、広島市の平和公園内に設置されている峠三吉詩碑にも刻まれている。

 

 何度も推敲した跡がみられるこの最終稿は、原爆の悲惨と人間の尊厳を描いた稀有な詩集の出版直前のものであり、峠の詩人としての反核と平和への強い意志を感じられる、世界の歴史にとって欠くことのできない記録物であるといえる。

 

文:河口悠介(「広島文学資料保全の会」事務局次長、2021年10月)


(以下写真撮影:㈱共同企画)