罪あるをみな許しつつ 土にものをば書き給ふ
主の静かなるみ姿の わりなくも胸を去らざる
わりなくも今日を去らざる
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わだかまる雲の切間に わずか開く月の夜空
みぎはには星をちりばめ めくるめく底なき暗さ
ああそが深き渕は 君が御座か
ああそが深き渕は わがゆく国か
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山の上なる巷のごとく 群れ瞬ける誘ひの灯よ
うしろに暗き夜空の闇に 主はわが罪を掲げ給へど
ああわれ弱し 吐息は怯えて戦くむねに涙満つる
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み空の奥に遠ざかる 雲雀の唄に惹かれて
何時知らず我は君(主)とありき
其処は何もあらず
其処は総て満ち溢れゐき
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ふとしも心惹かれ 光漲る野に出づれば
みどりさゆらぐ大地のむねは 息かぐはしく身を包み
春の声もて囁きぬ
「汝 われを愛するか?─」
ああ否 にこやかに笑まはしつつ
輝く御顔ぞ求め給ふ
「汝 われを愛するか?─」
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壮麗なる星座はみづくろひして各々に光を整へ
小さき祈りの家 窓に灯をともす
ああ歓びの降誕祭の思ひ出よ
人の世の旅にわが老ふる日も
魂の窓に安らひの灯をともしませ
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人目を避けて十字架の上より
降りまいらす主のしかばね
ゴルゴダの丘に夕べ迫りて風険し
共にかかりしわが罪の体
音も無く釘外されてわが上に落ちかかる
幻にしばしば覚むる夜ぞ暗し
ああ夜ぞ暗く悩まし
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汝わだつみの嵐の如く吠え狂ひ
襲いくる龍巻のごと
友を呼び立ち上るとも
闇を穿ち蒼ざめたる海波の上に
落つる僅かの閃きにも耐え得ずして
醜くも照し出され崩折るる
おお 光り 光りよ!
栄光の 光りよ!!